電動歯ブラシは歯医者は使わないって本当?歯科医師に直接聞いてみた

さとう歯科口腔外科クリニックのスタッフSです。あるとき、患者さまから「歯医者は電動歯ブラシを使わない、おすすめしないって本当ですか?」と聞かれました。

確かに、歯医者に行って電動歯ブラシを勧められたことがあるという人はかなり少ないかもしれません。ですが、実際に「電動歯ブラシを使っている」という歯科医師も存在するのも確かです。

このギャップは何なのでしょうか。一意見ではありますが、電動歯ブラシの機能性自体に疑いを持っているというよりも、別の理由で積極的には勧めていないという歯医者が多いのではないでしょうか。(ちなみに当院では、購入をご希望された患者さまに歯科専売モデルの電動歯ブラシをお売りしています)

ではそんなオーラルケアのプロである歯科医師から見た電動歯ブラシのメリット・デメリットは何なのか。効果的な使い方など含め、色々なことをせっかくなので院長に聞いてみました!

電動歯ブラシの購入に不安を持たれている方は、ぜひ最後までお読みいただけると幸いです。

歯医者から見た電動歯ブラシのデメリット

あくまで歯科医から見た電動歯ブラシのデメリットのため、一般的に言われていることから少し違った角度からの意見も含まれます。

一般的な歯ブラシよりは高いため、金額的に勧めづらい

市販の歯ブラシが100~300円程度、歯科専売品の歯ブラシは少し高いもので1000円近くする一方で、電動歯ブラシの価格帯は非常に幅が広く、1000円台の安価な電動歯ブラシもあれば、3万円を超えるような多機能な電動歯ブラシもあります。

正直、歯医者からすると安価な電動歯ブラシを使うくらいなら自分に合った一般的な歯ブラシを探して使ってもらうのとさほど違いがないというのが本音で、だからと言って患者さまに3万円以上する多機能な電動歯ブラシを対面で積極的に勧めるかと言われると、それはそれで難しいところがあります。

電動歯ブラシはブラッシングが苦手な人の補助としての側面があるため、苦手な人に対しては歯科衛生士が継続的なブラッシング指導を行うことでカバーできると考える歯医者も多いのではないでしょうか。

使い方を誤ると、歯や歯肉・歯ぐきを傷つける恐れがある

電動歯ブラシの一般的な使い方は、歯に軽く当てて振動や回転によって歯の汚れを落とすというものです。一見当たり前のように聞こえますが、今まで長年普通の歯ブラシを使っていた人が電動歯ブラシに切り替えたとき、普通の歯ブラシと同じように力を入れて押し付けてしまったり、ゴシゴシと動かしてしまうというのは良くある話です。

そのような使い方をしていると、歯の表面が削れてしまったり歯肉や歯ぐきに強い刺激を与えてしまうことがあり、以下のような症状を引き起こす可能性があるのです。

  • 歯の摩耗(磨耗症)
  • 歯肉退縮
  • 知覚過敏

使っているかどうか、使うつもりかどうかも分からない患者さまも多い中で「電動歯ブラシを使うなら説明書をよく読んでくださいね」と毎回言うのも難しいのが正直なところです。そのため、この場を借りて改めてお伝えいたします。

電動歯ブラシを使う際は、説明書をよく読んだ上で、できるだけ「力を入れず」「ゴシゴシと動かさず」使うようにしましょう!

「磨けたつもり」で磨き残しに気付きにくい

とは言っても、後述しますが電動歯ブラシは清掃効率に優れており、用途や部位に合わせた使い分けができることからも、適切な使い方をすれば非常に優秀なオーラルケア用品であることは歯科医師も認めるところです。

実際に使ってみると分かるのですが、わずかな時間で歯の表面がピカピカになるので最初はビックリする人も多いでしょう。しかしその一方で、表面のピカピカ具合に満足してその場での使用を終えてしまうリスクがあるのは歯医者としては危惧すべき点です。

歯と歯の間や歯の裏側など”見えづらい部分”に対してもブラシを当てる必要があるのは電動歯ブラシも一緒で、電動歯ブラシは清掃効率が優れているが故に逆に見えない部分に気付きづらいというデメリットを抱えています。とは言え電動歯ブラシの進化も凄いもので、最近ではスマートフォンアプリと連動して磨き残しの部位を教えてくれるというタイプの製品も登場しています。

歯医者から見た電動歯ブラシのメリット

ここまでデメリットを紹介してきましたが、機能に対しての言及がなかったことにお気づきでしょうか。古くは1990年代から普及が始まった電動歯ブラシは、私たち歯科医療従事者もびっくりするような速度で急激な進化を遂げています。

ここでは、歯医者から見た電動歯ブラシのメリットについて2つほどピックアップしてご紹介します。

口腔内の清掃効率に優れている

電動歯ブラシは、高速な回転や振動を利用して歯を磨くため、人間の手では難しい速度と効率で歯の汚れを除去できます。

また、ブラシ部分に注目してみると、多くの電動歯ブラシは一般的な歯ブラシよりもブラシ部分が小さいことに気付きますでしょうか?これは、歯と歯の間の汚れも取り除きやすいようにするための工夫と言われています。

電動歯ブラシと一般的な歯ブラシのヘッドのサイズの違い

もう一点、機能の進化にも触れるべきでしょう。最新の電動歯ブラシには、AIやスマートフォンアプリなどのテクノロジーを活用して毎回の歯磨きの時間や歯垢の除去などを記録する機能が備わっているものも出てきました。

つまり、毎回のブラッシングで磨き残しを教えてくれることで、電動歯ブラシを使っているうちに自然と自身のブラッシング技術も向上する…というのが最新の電動歯ブラシの機能的な凄さの一つです。ほかにも、ヘッドを消毒してくれるUV消毒機能や歯のホワイトニングに特化した「ホワイトニングモード(回転数や振動数が高くなるモード)」など、製品によってさまざまな機能が付いています。

年齢や性別を問わず一定の力で磨くことができる

ブラッシング時についつい力を入れすぎてしまう人や、逆に力を入れることが難しい高齢者の人などが使っても、一定の力で磨くことができる点が電動歯ブラシのもう一つのメリットです。

ブラッシングにおいては、歯を磨く力が弱すぎると歯垢や汚れを十分に除去できず、逆に過剰な力で磨いてしまうと歯肉を傷つける原因にもなります。その意味において、強すぎず弱すぎず一定の力で磨くことができるというのはそれだけでも十分な電動歯ブラシの強みと言えるでしょう。

結論、使い方を誤らなければ電動歯ブラシは便利なグッズである

総評としては、歯科医師から見ても電動歯ブラシの機能や便利さは否定できるものではなく、使い方を誤らなければ電動歯ブラシは優れたオーラルケア用品です。実際、雑誌のアンケートにおいて歯医者の約4割が「電動歯ブラシを使用している」または「電動歯ブラシと一般的な歯ブラシを併用している」と答えていることからも、同じ結論が言えるでしょう。

普段使っている歯ブラシに対する歯科医師へのアンケート結果
図:『日経トレンディ 2022年11月号』歯医者278人へのアンケートをもとに当院作成

ただ、もし電動歯ブラシを検討するのであれば、安さにこだわるのはあまりおすすめしません。機能が限定されることで電動歯ブラシの強みである”効率性”が犠牲になったり、ブラシヘッドの互換性がない・弱いことでヘッドが歯や歯肉に合わなかったときに取り替える手段がないといったリスクがあります。

せっかく電動歯ブラシを買うのであれば、じっくりと検討して自分が納得できる一本を買うことをおすすめします!

電動歯ブラシに興味が出た方は、色々調べてみるのも良いですが普段通っている歯医者さんで相談してみるのもありでしょう。当院もそうですが、よほど電動歯ブラシに否定的な歯医者でなければ窓口で電動歯ブラシを販売してくれる歯医者も少なくありません。

ただし取り寄せの可能性が高い(保管場所などの都合から、歯科医院ではあまり積極的に電動歯ブラシの在庫は持ちたがらない)点には注意しましょう。もし「なるべく早く欲しい!」ということであれば、インターネットからの通販でも購入できるので、そちらから探すほうが早い可能性が高いです。記事の最後におすすめの電動歯ブラシをご紹介しているので、ご参考になれば幸いです。

種類別の電動歯ブラシの特徴

電動歯ブラシを大別すると、「振動式」「回転式」「水圧式」の3つのタイプに分かれます。どのタイプもそれぞれ強みがあるため、電動歯ブラシを選ぶ際にはそれぞれの特徴を理解した上で検討するようにしましょう。

振動式電動歯ブラシ

ブラシの振動によって歯を磨いていく最もオーソドックスなタイプです。シンプルながら口腔内の清掃効率に優れており、現在市販されている電動歯ブラシの多くはこの方式を採用しています。また発展形として、従来の振動式よりもさらに振動数が多く清掃効率に優れた音波振動式の電動歯ブラシが最近は流行しています。

回転式電動歯ブラシ

ブラシの回転によって歯を磨いていくタイプです。歯の表面を均等に磨くことができる点が特徴で、一般的な回転式よりもさらに高速で回転する「ソニック・スクリュー式電動歯ブラシ」というタイプも存在します。

水圧式電動歯ブラシ

水圧を使用して歯を磨いていくタイプです。歯の間の汚れも取り除きやすい点が特徴で、歯磨き中に常に水を流し続ける「連続流水式電動歯ブラシ」というタイプも存在します。

メーカー別の電動歯ブラシの特徴

電動歯ブラシの国内シェアや人気製品についてはさまざまな媒体が独自に統計を取っていますが、どの媒体でも共通して上位に挙げられるのが、

  • フィリップス
  • パナソニック
  • ブラウン

の3メーカーです。そこで、各メーカーの電動歯ブラシの特徴についても簡単にご説明します。

フィリップス

髭剃りで有名なフィリップスですが、「ソニックケアー」シリーズで知られるように電動歯ブラシでも今や大きなシェアを誇っています。ソニックケアーシリーズは、毎分31,000回の高速振動と音波水流によるブラッシング、ブラシヘッド(替えブラシ)の種類の豊富さを売りにしており、インプラントや矯正中の人でも使える幅の広さも強みです。

パナソニック

大手家電メーカーとして知られるパナソニック。実はパナソニックは1970年代からオーラルケア分野の商品開発に着手しており、電動歯ブラシについても40年以上の研究開発による研鑽が現在の製品に生かされています。パナソニックの電動歯ブラシといえばドルツ(Doltz)シリーズが有名ですが、ドルツシリーズの特徴としては横向きの振動を与える「ヨコ磨き」と、立体的な振動を与える「タタキ磨き」を利用した歯垢除去の効率性の高さが挙げられます。

ブラウン

電動歯ブラシだけでなく、さまざまなオーラルケア製品を取り扱っているブラウン。電動歯ブラシにおいては「オーラルB」シリーズが有名で、前述の2社が振動式であるのに対して回転式を採用しています。しかもただの回転式ではなく、3D丸形回転ブラシと呼ばれる特殊なブラシを採用しており、左右上下と満遍なく歯垢をこすり落とすことができるのが特徴です。また、さまざまなブラッシングモードやスマートフォン連動など機能性に優れている点も見逃せません。

電動歯ブラシの効果的な使い方

電動歯ブラシが持つ機能をフルに発揮させ、口腔内を常に清潔に保つためには幾つかのポイントがあります。以下では、電動歯ブラシの効果的な使い方をご紹介します。

ヘッドブラシに細菌が繁殖しないよう、メンテナンスに気を配る

歯ブラシのヘッド部分は細菌が繁殖しやすく、いくら振動や回転に優れた電動歯ブラシを使っていたとしても細菌が付着したブラシを使っていると十分なクリーニング効果を発揮してくれません。

ブラシヘッドのお手入れ方法としては、使用後は水ですすいだ後に乾燥させ、風通しの良い場所で保管するようにしましょう。ヘッドを乾燥させる方法としてキャップを使う手もありますが、完全に密閉された状態だと細菌が繁殖するおそれがあるため、なるべく小さな穴が空いているものを選ぶことをおすすめします。

また、メーカーによって若干の幅はありますが、一般的には3ヶ月に1回の頻度でヘッドブラシを交換することが推奨されています。(一般的な歯ブラシは1ヶ月に1回のため、その意味では少し楽です)

説明書をよく読み、「力を入れすぎず」「ゴシゴシと動かさず」使う

最近の電動歯ブラシは、押し付けすぎの状態をディスプレイや光で注意してくれる防止機能が付いているものも多いですが、それだけメーカー側も「力の入れすぎ」「動かしすぎ」という使い方をして欲しくないとも取ることができます。

電動歯ブラシに慣れないと「こんな軽く当ててるだけで大丈夫かな…」と思われるかもしれませんが、電動歯ブラシは毛先を歯に当ててゆっくりと動かすだけで十分な清掃能力を発揮します。何度も言うようで恐縮なのですが、くれぐれも普通の歯ブラシと同じような使い方をしないようにしましょう。

研磨剤無配合・低発泡の歯磨き粉を使う

歯科医の立場としては、電動歯ブラシには研磨剤を配合していない歯磨き粉を使うことを推奨しています。「研磨剤入りの歯磨き粉と合わせて使えば最強では?」と思われる人もいるかもしれませんが、磨く力の強い電動歯ブラシに研磨剤が合わさると、歯を傷つけてしまう可能性があるからです。特に歯肉に炎症がある人や歯肉が敏感な人は、意識して使用を控えて歯肉に優しい歯磨き粉を使うことをおすすめします。

また、発泡性が高い歯磨き粉を電動歯ブラシと合わせて使うと口の中がすぐ泡だらけになりやすいです。そのため、電動歯ブラシ用の歯磨き粉として適正があるのは研磨剤無配合、かつ低発泡であることが求められます。両方の条件を兼ね揃えたものとなると、ジェルタイプを選ぶのが無難ではないでしょうか。

デンタルフロス・歯間ブラシを併用する

より入念に口腔内をケアするためには、電動歯ブラシを使ったあとにデンタルフロスや歯間ブラシを使うことをおすすめしています。ヘッドの形状の問題上、どうしても歯間などの隙間に付着した歯垢や食べ物の残りカスまで完璧に取り除くことは難しいという点は非電動の歯ブラシも電動歯ブラシも一緒です。

そこで活躍するのが、歯間などの隙間の汚れを除去するためのデンタルフロスや歯間ブラシです。いずれも歯医者から見てコストパフォーマンスに優れたオーラルケア用品で、歯周病や口臭予防という観点からも積極的に利用を推奨されています。電動歯ブラシとも相性が良く、併用することで歯の表面だけでなく目に見えないところのケアもできるでしょう。

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CURAPROX HYDROSONIC PRO(ハイドロソニックプロ)

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一歩先のオーラルケアでお口の健康を守りたいという人は、ぜひご検討ください。