デンタルフロスの使用頻度 – 日本と海外での意識の差とは

さとう歯科口腔外科クリニックのスタッフIです。皆さんは、デンタルフロスを使っていますか?

実は、毎日使っているであろう歯ブラシだけでは、歯と歯の間に溜まる歯垢(しこう/プラーク)は60%ほどしか落とせていないと言われています。たまった歯垢は2~3日で石灰化しはじめ、取れにくくなります。さらに放っておくと歯石になり、歯医者さんに行かないと取れなくなってしまいます。

そこで、今回はプラークをためないためのデンタルフロスの使い方や、適切な使用頻度についてご紹介します。お口の健康のために、是非今日から試してみてくださいね。

デンタルフロスの種類

デンタルフロスには、大きく分けて以下の2種類があります。

  • ホルダータイプ
  • ロールタイプ

それぞれの特徴について説明していきます。

ホルダータイプ

前歯に対して使いやすい「F字型」と、奥歯・前歯ともに使いやすい「Y字型」があります。「ロールタイプが苦手でもホルダータイプなら使える」という人も多いため、デンタルフロスを初めて使うという方はホルダータイプをまず使ってみるのがおすすめです。(スタッフIは「Y字型」を使っています。)

もしフロスに食べかすが絡んだ場合には、水で流してから、次の歯間をお掃除します。

ロールタイプ

使用するごとに必要な長さ(40cm程度)のフロスを切り取り、左右の指に巻きつけて使用します。一度歯間にフロスを通したら、フロスを巻くことにより、歯間ごとに新しいフロス部分で掃除することができます。

ロールタイプにはワックスのついているタイプと、ワックスがついていないタイプの2種類があり、ワックスタイプは、歯間にツルっと入りやすく銀歯などの詰め物をしている方におすすめです。 ノンワックスタイプは、水分を含むことで繊維がよく広がるので、歯の間にうまくフィットして汚れを落としてくれます。こちらは大きな詰め物がない方におすすめです。

デンタルフロスの使い方

  1. 前後に動かしながら、ゆっくり歯と歯の間に挿入していきます。歯と歯の間は狭くなっているため、フロスが通りにくいのですが、力いっぱいフロスを通してしまうと、歯茎を傷つけてしまうので気を付けてください。
  2. 歯茎に少し触れるまでゆっくり挿入できたら、それぞれの歯の側面にフロスを沿わせて上下に動かして、食べかすやプラークをとっていきます。
  3. ゆっくりと前後に動かして、歯間から抜いてください。

デンタルフロスを使用するメリット

多くの歯医者・歯科衛生士がデンタルフロスの利用をおすすめしていますが、そもそもなぜデンタルフロスを使うことがオーラルケアにおいて良いとされているのでしょうか。ここでは、デンタルフロスのメリットを4つほどご紹介します。

歯間のプラーク除去効果アップ

歯周病誌の報告によると、歯ブラシとデンタルフロスの両方を使うことで、歯間のプラーク除去率が1.5倍にアップしたというデータがあります。

むし歯や歯周病の予防になる

プラークがあることで、むし歯や歯周病の原因に繋がります。プラークを除去することで、むし歯や歯周病の予防につながります。

不具合の危険サインが早期に発見しやすくなる

デンタルフロスを毎日使っていると、「フロスが同じ場所で引っかかってしまう」「フロスが頻繁に切れてしまう」などの気になることがあれば注意が必要です。詰めものや被せものに不具合がある可能性があります。不具合があると新たな虫歯になりやすくなってしまうため、気になる場合は歯医者さんで診てもらいましょう。

また、「歯茎から血が出る」場合には歯周病の可能性があります。こちらの場合でも、まずは歯科医院で診てもらうのがいいでしょう。

口臭予防や口臭改善になる

食べかすやプラークなどの汚れが原因で口臭になっている場合があります。食事などで一度外したマスクを付け直すとき、マスクが臭いと感じるときがありませんでしょうか?もし臭いが気になったら、それは口臭が原因の可能性があります。毎日のフロッシングで、しっかり食べかす・プラークを取り除いて、口臭を予防したり、口臭を改善したりできます。

デンタルフロスの使用頻度

冒頭にも記載したとおり、歯間などに残った歯垢は2~3日で石灰化が始まると言われており、日が経つごとに取りにくくなってしまいます。そのため、頻度として1日1回はフロスを使うようにするのが望ましいでしょう。特に寝る前の使用をおすすめします。

寝る前の使用をおすすめする理由は、就寝中は唾液の分泌が少なくなることにあります。細菌は唾液のもつ自浄作用によって洗い流されますが、唾液の分泌量が減ることで、細菌が定着しやすくなります。睡眠時の口の中を清潔に保つには、寝る前にプラークをできるだけ取り除きましょう。

1日1回という頻度に対する懸念

デンタルフロスを1日1回という頻度で使うと、すきっ歯になる原因になるのでは?というような懸念・質問をいただくことがあります。しかし、歯は動かすために矯正器具を使うほどの力が必要になるほど固い部位のため、毎日数秒だけ歯の隙間に糸を差し込む程度で歯が動くということは考えづらいです。

歯と歯の間に隙間が出来るように感じる方もいますが、歯垢が落ちたことで本来の歯間の姿に戻ったというケースがほとんどです。もし痛みをともなう出血が続くようであれば、歯茎の状態がそもそも悪かったという可能性があるため、歯医者で診てもらうことをおすすめします。

日本と海外のデンタルフロスに対する意識の差

欧米での歯科の治療費は、日本と比べると非常に高額です。そのため、お口の健康にはとても気を使っています。その欧米の人たちは、歯ブラシとデンタルフロスは、必ずセットで使っているのです。

ここまで読んでくださった方は、なぜだか既にお分かりかと思います。私が歯科業界に務める前のことですが、アメリカの方と一緒にお仕事をしていたことがあります。そのときに「アメリカではブラッシングよりフロスの方が大事だと言われています。」と教えていただき、それ以来デンタルフロスを欠かさずに使うようになりました。

初めてデンタルフロスを使う方や、久しぶりにデンタルフロスを使う方は、使ったあとのフロスのにおいを嗅いでみてください。きっと「くさー-!」となります。1週間継続してフロスを続けたら、改めて嗅いでみてください。フロスの効果を実感できるはずです。

ウォーターピックを使うのも有効

最近では、ウォーターピックやジェットウォッシャーなどの名前で、水流で歯間や歯周ポケットの汚れを洗い流す口腔洗浄器が販売されています。フロスと比べると持ち運びがしづらいというデメリットはありますが、奥歯の歯周ポケットなど糸が届きづらい箇所にも使いやすく、ブリッジ・矯正器具を付けている方や、フロスがどうしても苦手という方にもおすすめです。