さとう歯科口腔外科クリニックのスタッフSです。皆さんは、「ロイテリ菌」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
ロイテリ菌とはヒト母乳由来の乳酸菌で、大枠としてはヤクルトなどと同じような分類です。ちなみに当院では、窓口でバイオガイア社のロイテリ菌入りタブレット「プロデンティス」を販売しており、定期的に購入される方もいらっしゃいます。
「でも、乳酸菌と歯科って関係あるの?」
と思われる方もいるでしょう。ですが、ロイテリ菌はプロバイオティクス(腸の中に乳酸菌を送り込み、腸内環境を改善するアプローチ)の中で随一と言えるほど、歯科治療に関する豊富な臨床実績や論文があります。今回はそんなロイテリ菌の概要や効果効能について、ご紹介していきます。
ロイテリ菌とは
ロイテリ菌は、健康な生活に必要な善玉菌・乳酸菌の一つです。口腔内に留まることで、虫歯や口臭の原因となる菌(悪玉菌)を抑制することができます。冒頭にもお伝えした通り、ロイテリ菌と歯周関係の治療における論文が幾つか存在するので抜粋してご紹介します。
- L. ロイテリ菌プロデンティスで歯茎の出血が減少
- L. reuteri による発酵乳中のストレプトコッカス・ミュータンスの減少
- L. reuteri による歯肉出血および歯肉の腫れの減少
- ロイテリ菌は2種のカンジダ菌(カンジダ・アルビカンス、およびカンジダ・パラプシローシス)の増殖をほぼ完全に阻害
それぞれの内容の説明は割愛しますが、エビデンスがあることからもロイテリ菌は歯周内科治療の一つとして当院では推奨しています。
ペット用や赤ちゃん用のサプリメントなどもあることから分かるように、前提としてロイテリ菌は動物や乳幼児に与えても差し支えないほど安全性が高いと言えるでしょう。
カンジダとの関係
前述の論文の中に「カンジダ菌の増殖を阻害する」という内容が含まれている通り、ロイテリ菌はカンジダに対する効果効能も実証されています。
カンジダとは、真菌の一種であるカンジダ属の細胞が異常増殖することによって引き起こされる感染症の総称です。カンジダ属には多数の種類がありますが、一般的にカンジダ感染として知られるのは、カンジダアルビカンスやカンジダクルーセイなどの種類です。
カンジダは、口腔内や腟、皮膚などの体表面、消化管など、人体の様々な部位に存在しています。通常は免疫力によって制御されているものの、体調不良や免疫力低下などの要因があると、カンジダが異常増殖して症状を引き起こすことがあります。
カンジダ感染の症状としては、発疹やかゆみ、腫れ、痛み、皮膚の乾燥や剥がれ、おりものの異常増加などがあります。治療には、抗真菌薬や外用薬などが使われますが、再発予防のためにも、生活習慣の改善や免疫力の向上などにも注意が必要です。
タブレットやヨーグルト、歯磨き粉などの種類がある
ロイテリ菌を摂取するための方法としては、近年様々な商品が存在しています。当院で販売しているタブレットのほか、ヨーグルトや歯磨き粉などの選択肢もあり、お好みの方法で摂取することができます。
とは言え、一番手軽に(定期的に)摂取できるという意味ではタブレットが一番摂取しやすいのではないでしょうか。
ロイテリ菌の期待効果
最近、テレビや雑誌でも取り上げられる機会の増えたロイテリ菌ですが、なぜここまで注目されているのでしょうか。私たちの立場で「ちょっと怪しい…」というものは除き、紹介されているロイテリ菌の期待効果についてまとめました。
- 虫歯予防・歯周病予防への効果
ロイテリ菌には、虫歯の原因となる虫歯菌や、歯周病の原因となる歯周病菌の増殖を抑制する働きがあります。 - 口臭対策としての効果
前項でご紹介した「増殖を抑制できる歯周病菌」の中には、口臭の原因物質である硫化ガスを作る菌も含まれます。そのため、口臭対策としての働きも期待でき、実際にタブレットを摂取された方の声としても「口臭が気にならなくなった」(※)という内容も多いです。 - 乳幼児のアトピー性皮膚炎への効果
実際の臨床試験の内容を引用すると、『乳幼児アトピー性皮膚炎の治療を受けている乳幼児に対して、L. ロイテリ菌を継続投与した結果、12ヶ月後には皮膚表面の湿疹面積が57%縮減した』という報告があります。 - 便秘や下痢解消への効果
ロイテリ菌は乳酸菌の1種であることから、乳酸菌の効果効能としてよく知られている「腸内環境の改善」への働きもあります。つまり、乳酸菌飲料などで言われている便秘や下痢の解消についても期待できるものです。 - 免疫力の向上効果
ロイテリ菌は体内でロイテリンという天然の抗菌物質を生成し、善玉菌の増加および活性を促進するという働きもあります。そのため、風邪やウイルス等に対しての免疫力の向上についても期待効果の中に含まれています。
痩せる効果や癌予防に対しては不明瞭
ダイエットのお供や全身の健康維持のためにロイテリ菌を摂取することは、考え方としては間違ってはいないと言えるでしょう。しかし、たまに誤解されることがあるのですが、ロイテリ菌単体に直接的な痩せる効果や癌予防への効果があるというのは臨床試験でも証明されていません。
ロイテリ菌のコンセプトとしては、継続的に摂取することで口内から全身の健康バランスを整えるというものです。「コレ単体で何もかもが解決する」という捉え方ではなく、日常のケアや医院での診療・治療に併せて使っていくものと考えておくことをおすすめします。
ロイテリ菌の副作用について
乳酸菌がそもそも副作用と呼べるほどのものはない(もともと人体に含まれる菌であり、摂りすぎた分は排出される)ので、「副作用」と言うと少し大げさな言い方かもしれません。ただし、ロイテリ菌単体には副作用がなくとも、ロイテリ菌が含まれる食品や飲料品で見た場合はどうでしょうか。
例えばヨーグルト。通常ヨーグルトはタンパク質やカルシウムのほか、商品によっては脂質や糖質、塩分なども含まれています。これらを大量に摂取してしまうと、肥満・高血圧・動脈硬化などの生活習慣病の原因になり得ます。
また、ヨーグルトなどの乳製品を摂りすぎて、お腹を下したり下痢になった経験はないでしょうか?
成人した日本人の多くは乳製品に含まれる乳糖の分解能力が低いと言われており、「牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなる」という話をよく聞くのはそのためです。
ヨーグルトは比較的乳糖が少ない部類ですが、それでも体質によってはお腹に変調をきたす人もいます。そのため結論としては、牛乳でお腹の調子が悪くなるような体質の方は、ヨーグルトでロイテリ菌を摂取するのは辞めておいた方が良いでしょう。
ロイテリ菌については一度に大量摂取しても人体への害はないとされていますが、「継続的に」摂ることが望ましいものであるため、結果として大量摂取も(主にコストの面から)おすすめしません。
ロイテリ菌の摂取方法
当院で販売しているロイテリ菌タブレットについて推奨されている摂取方法は、1日1粒、夜の歯磨き後に舐めるように摂取するというものです。(歯磨き後なのでなるべく噛まないように…)
必ずしも夜の寝る前に摂取する必要は正直ないのですが、「口内環境を整える」という観点ですと口の中が比較的キレイな歯磨き後に摂取するのがおすすめです。大勢にアンケートを取ったと仮定して、1日の中で一番時間をかけて歯を磨くであろうタイミングが夜なので、夜と言っておくのが一番”丸い”という程度です。
ただ一点だけ注意点があり、タブレットを食べた直後に洗口液は使わないようにしましょう。洗口液には殺菌作用がありますが、ロイテリ菌から摂取できた折角の善玉菌も死んでしまう恐れがあります。そのため、洗口液の使用とロイテリ菌の摂取は30分以上の間隔を空けることが推奨されています。
一度、ぜひ試してみてください!
歯科医院の立場としては、「単体での副作用リスクが極めて低い」という点が非常に大きく、安心して自信を持って患者さまに紹介することができます。
もちろん合う合わないはあるので、誰しもが納得して継続できると言い切ることはできませんが、「口の中の嫌なネバつきがなくなった」「口臭が気にならなくなった」「胃腸の調子が良くなった」(※)など、多種多様なお声を聞くおすすめのオーラルケアアイテムです!
(※)個人の感想となります。